100兆年後の未来、宇宙最後の星で生まれた宇宙でたった1人の子供の物語

coo

かつて宇宙は、金銀砂子のように散りばめられた無数の星々できらめいていた。しかし永劫とも思える時の流れの中で、宇宙は果てしなく膨張し、遠くの銀河は光ですらも追いつけないほどの彼方へ消え行き、そして身近に残された星々も、一つ、また一つと燃え尽き、その命を終えていった。
星々に満ちた時代には、光の速さで宇宙を旅した種族たちも今では何処かへ消え失せ、宇宙は暗く寂しく、そしてものすごく退屈な世界と化していた。
やがて宇宙が100兆歳の誕生日を迎える頃、宇宙で輝く星は最後の一つとなった…

ここは宇宙最後の星「シャンバール太陽系」。暗い宇宙をかすかに照らす唯一の星だ。かつては「宇宙のオアシス」と呼ばれたこの星も、だがしかし、とうの昔に白色矮星へと変化し、その残された時間はあと数億年に迫っていた。
そんなシャンバール太陽を巡る小さな惑星には、宇宙で最後の知的種族が住んでいた。もはや惑星は不毛の大地と化し、宇宙空間の資源も底を尽き、そこに生き延びる人々は、厳しい生活を余儀なくされていた。彼らは、数万年にもおよぶ寿命を持つため、出産までも厳しく制限されていた。

クーは、そんな世界に3千年ぶりに生まれた、この宇宙でたった1人の子供なのだ。クーは夢見ていた。遥かな昔、宇宙がまだ生まれたばかりの頃、夜空一面がたくさんの星で埋め尽くされている光景を。
ある日、クーは不思議な老人に出逢った。老人は自らをリガロス星人だと名乗り、宇宙の始まりから終わりまで、全てをその目で見てきた時の旅人だと言った。1億年も生き続け、死期が迫ったその老人は、クーの夢を叶えるために、時空を旅する不思議な乗り物をクーに与えた。
クーの冒険の旅が始まった。最初に目指すは老人が若い頃に訪れ、宇宙で一番愛した星、美しい「地球」だ!

今回は、遠い遠い未来の宇宙人の物語です

現在、宇宙は無数の星で満ちており、観測可能な宇宙の大きさは、どの方向でも約460億光年におよんでいます(註1)。

しかし、この先も永遠にこの状態が続くかというと、決してそうではなく、宇宙空間が膨張するため、遠くの銀河はどんどん遠退いて、私たちの視界から姿を消していきます。その結果、数千億年のうちには、私たちから見える全宇宙は、重力によって結びついた、わずか直径数百万光年の小宇宙だけとなってしまうのです。
さらに星の材料であるガスも徐々に使い果たされるため、星の形成の速度は鈍り、およそ1兆年以内には、太陽のような比較的大きな恒星が姿を消し、100兆年もたった頃には、小さいけれども数兆年も長生きする赤色矮星も姿を消して、宇宙は真っ暗になると考えられています(註2)。

「そんな暗くて寂しい世界で生まれる人々は、何を考えて生きているのだろう。
もしも彼らが星々に満ちた現在の宇宙を見たならば、どんな風に感じるだろう」
ふとそんなことを思ったことが、私が今回の宇宙人クーを考え出すきっかけとなりました。
自分がクーだったら、きっとこんな美しい宇宙を見たら感動し、大切に守りたいと思うんじゃないだろうか。そんな思いから、どこか寂しげで愛嬌のあるクーのデザインを考えました。

参考文献

(註1)「すべてはどのように終わるのか―あなたの死から宇宙の最後まで」クリス・インピー / 早川書房 / 2011年

(註2)宇宙の一生はこれで終わりではなく、実はまだまだ続きがあります。興味のある方は、以下の本を是非ご一読下さい。宇宙の未来について、とても分かりやすく書かれています。

宇宙のエンドゲーム」フレッド・アダムズ、 グレッグ・ラフリン / 徳間書店 / 2002年
宇宙から恐怖がやってくる」フィリップ・プレイト / NHK出版 / 2010年

(公開日:2012/04/30)