湿原怪鳥キングサロルン

北海道の釧路湿原から出現した、6500万年前の獣脚類(鳥類の祖先)の怪獣。
釧路湿原に棲息するタンチョウ(丹頂鶴)が、先祖返りを起こし怪獣化したのだ!
湿原一帯をテリトリーとし、美しい自然を破壊する者を攻撃する。
怒ると頭部の赤い部分が光り輝き、鋭いクチバシで、厚さ7メートルの鉄筋コンクリートをも貫き通す。
両翼の風切羽(かざきりばね)は硬質化し、鋭利なナイフのように敵を切り裂く。
時速700キロで成層圏を飛ぶことができる。

怪獣デザイン

今回の物語の舞台である釧路湿原は、釧路川とその支流を抱く広大な湿原で、その広さは日本最大。
国立公園(釧路湿原国立公園)にも指定され、国の特別天然記念物であるタンチョウの生息地としても知られています。

さて、そんな雄大な自然の中から生まれたキングサロルン、ご覧の通りのタンチョウをモチーフとした怪獣ですが、厳密には鳥の怪獣ではありません。鳥の祖先・獣脚類の怪獣なのです!

獣脚類なのですから、クチバシに牙が生えていても、翼に爪が生えていても、また太くて立派な尻尾が生えていても、ちっとも不自然じゃありません。

つまりキングサロルンは、鳥類と恐竜の好いとこ取りをした怪獣なのです。

(これまでにも「ウルトラマン80」の羽根怪獣ギコギラーや、「ウルトラマンパワード」の有翼怪獣チャンドラーなど、鳥類と恐竜をミックスしたような怪獣はいくつか存在するのですが、「獣脚類の怪獣」と銘打つだけで、なんだかワクワクするのは私だけでしょうか?)

また、キングサロルンを、従来の鳥怪獣と大きく区別しているのは、その非常に細長いクチバシです。

今までこんなにクチバシの長い怪獣は(鳥怪獣も他の怪獣も含め)ほとんどいませんでした。唯一、例外は、昭和46年に日本テレビ系列局で放送していた「マチャアキ・前武 始まるヨ!」に登場していたマチャアキ怪獣ガリガリ(下図)くらい。(ただし、ガリガリはクチバシは細長いものの、頭は平たい逆三角形で、クチバシの生えたカマキリといったイメージですが…)

怪獣デザイン

また「怒ると頭部の赤い部分が光り輝く」という設定も、全くデタラメに思いついたものではなく、実はれっきとした根拠があります。

実際のタンチョウは、頭に赤い毛が生えているのではなく、肌が露出しているのですが、この赤い部分は伸縮が自在で、興奮すると面積が広がります。タンチョウは頭の赤い部分で感情や意思を表現すると言われており、例えば、相手を威嚇するときには頭を下げ、広がった赤い部分を見せながら突進するそうです(註1)。

ちなみに「サロルン」というのは、アイヌ語で「タンチョウ」を意味する言葉です。

最後に余談ですが、市川崑が監督し、日本の民話「鶴の恩返し」を映画化した「つる -鶴-」という作品があります。吉永小百合が鶴の役に扮しているのですが、そのラストで、いきなり怪獣特撮のような着ぐるみの鶴が機を織るシーンが登場し、あまりの違和感に、当時観ていた観客は大変戸惑ったそうです。機会があったら私も一度、そのシーンだけでもいいから観てみたいなぁ…

参考記事

(註1)野鳥百景 文字化資料 NHK『野鳥百景~タンチョウ(丹頂)』(アクセス:2013/07/31)

(公開日:2013/07/31)

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